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オカリナは音が正確に出ない?音域が狭いうえに、安定しないなど、いろいろな短所があるといわれます。でも考えてみましょう。こういう短所の数々は、実はオカリナにしかない、オリジナルの面白さにつながっているんです。この記事では、オカリナの短所がどんな面白さにつながっているかお話しし、「うまく吹けない」と悩んでいる初心者の方の悩みをぶっ飛ばします。

まずはわたくしの、へたくそな演奏を聴いてください。

オカリナの持ついろいろな表情

私は、いろいろなオカリナのコンサートに行ったり、
オカリナフェスタでいろいろな方の演奏を聴いて、
また、自分でも様々な場で吹いて、
オカリナにはいろんな表情があるなあと感じます。

実にいろいろな表情があります。

癒しを感じられるスピリチュアルサウンドの表情
アンサンブルなどでの純然たるクラシカルな表情
フォルクローレなどを吹くときの民族楽器とよく合う表情

ジャズによく合うオシャレな表情
日本の唱歌や歌謡曲などを吹くときの抒情的な表情
横笛や尺八を想像させる和風な表情

など、時と場に応じて、様々な表情を見せてくれます

そしてもう一つの表情も確かにあります。

それは
ぴっぴっぽっぽという感じの
面白系 ギャグ系のすっとぼけた表情です。

これは、
音程が安定しない、微妙にずれている、手作りのオカリナにしか出せない感じですね。
完璧じゃなければないほど味が出る。

こういう表情のオカリナは
小さい子供が大好きですね。
アンパンマンとバイキンマン劇場をオカリナでした時は
大笑いでした。

みんなのうたや
おかあさんといっしょの歌などを
オカリナで吹いたら
ほかの楽器にない親しみや味が出ます。

音程が微妙にずれているほうが
より親しみやすく
気軽に聴いてもらえるんです。

例えば「おかあさんといっしょ」のこの曲
オカリナで吹いてみたらこうなります。

オカリナの短所をあげてみる

それでは
オカリナにあって他の楽器にない短所をあげてみましょう。

出来上がりにあたりはずれがある

オカリナは、窯で焼く陶器の楽器です。
焼き物には出来上がりが様々であり、
作家すら意図しなかった出来上がりがあるように、
オカリナも焼きあがってきたらどんな笛になっているのか、未知数な部分があります。
だから、同じメーカーで同じ名前のオカリナでも、音の善し悪しにあたりはずれがあることは否めません。

音程が微妙にずれている

おおむね、オカリナは、どんなに調律されたものでも、
音程が微妙にずれていることが多いです。
音程を正確に保つことが苦手な楽器で、ピアノなど正確な調律に慣れている人は
しばしば、「気持ち悪くて吹けない」といいます。

その時々で音程にむらがある

先に挙げた短所と関係ありますが、
オカリナは温度や湿度の差に敏感で、
そのときの吹く状態によって、
半オクターブか1オクターブくらいのばらつきが出ます。
特にアンサンブルをするときなんかは、苦労します。
 

一定の息で正確な音程を保てない

また、いくら息の量を一定に保っていても
音程がどうしても正確にならないという点もあり、
正確な音程で吹こうと思えば、
そのオカリナの特徴を知って自分の息をコントロールしなければなりません。
 

かすれて出ない音がある

さらに、音階の中で、かすれてしまって出ない音のある楽器もあります。
いくら努力しても音が出なかったり、かすれているということもよくあり、
特にアルトCの最高音がかすれることはよく起こります。
これは吹き方が悪いのではなく、
そのオカリナの音が出ないということの場合が多いです。
 

音域が狭い

オカリナの音域は、フルートやリコーダーに比べて狭く、
指穴が12個ある一般的なもので
ラシドレミファソラシドレミファ までです。
曲を楽譜通りに吹こうと思えば、吹ける曲が限られてきます。
 

リコーダーと違い、2倍音が出ない

音域が狭い理由として、リコーダーやケーナなどの開管(筒状)の笛は
同じ運指でも強く息を吹き込むことで、オクターブが上の高い音(2倍音)が出ますが
オカリナは閉管(壺状)の笛で、強く息を吹き込むと、音が出なくなるだけで
2倍音は出ません。
 

見た目がサツマイモみたいである

「見た目がサツマイモみたいでオシャレじゃない」と言われたこともありますが
確かに一般的なオカリナの形は、サツマイモみたいですね。
このコメントには笑ってしまいましたが、私はかえってその形が可愛いです。

 

水洗いできない

オカリナは陶器であり、普通は水洗いするとよくありません。
プラスチックのリコーダーなんかは、吹いた後
水洗いして、スポンジのついた棒で内部を拭いたりしますが
オカリナはそういう手入れができません。

このように、オカリナの短所をつらつらとあげましたが
「だからオカリナはいやだ」
「オカリナは子供の遊びだ」という人がいます。

しかし、このオカリナの短所こそが
オカリナにしかない、素晴らしく面白いポイントにつながっているのです。

オカリナの「持ち味」は、
この短所があってこそと考えています。

オカリナの短所を「持ち味」にする

それでは、このオカリナの短所をどのように補い、生かしていくのでしょうか。
それには二つの考え方があると思います。

一つは、オカリナの短所をカバーするという考え方
もう一つは、オカリナの短所をそのまま活用する考え方です。

オカリナの短所をできるだけ補うには

一つは、こういう短所ができるだけ目立たないようにカバーすることです。
作る側からすれば、
できるだけ音程が正確になるようにチューニングをし(特にアンサンブル用モデル)
また、音域の広いダブレットやトリプレットタイプが開発されています。

(写真は、平成30年の森の国オカリナフェスティバルのコンテストで、板東正裕さんが作った、5連オカリナモデルです。
これを吹きこなせたら、フルート曲だけでなく、ピアノ曲もほぼできるでしょう。)

吹く側からすると、
高音部が出にくいオカリナについては、
あごを引き付けて吹くなど、音程に応じて適切な角度を見つける。
また、演奏会の前に
音が出ないように歌口を押さえながら息を十分吹き込んで湿度を与えておく、
手に包んで暖めておく
チューナーで音程を把握して、吹く息の強さをコントロールする
など、演奏方法でカバーします。

しかし、私はもう一つの考え方
「短所をそのままメリットにする」という考え方が
オカリナ独自の良さを最大に出せる重要ポイントと思っています。

オカリナを吹くなら、オカリナにしか出せない味を出したいと思います。

一つ一つが豊かな個性と考える

オカリナには出来上がりにあたりはずれがあるということですが、
これは、見方を変えると、いろいろなオカリナが出来上がってくるということで、
オカリナほど個性豊かな楽器はありません。
世界に同じオカリナは二つとありません。
そんなオカリナとの一期一会の出会いこそ、オカリナの醍醐味でもあります。

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(淡路島の瓦の土から作られる、「吟オカリナ」の作家のともちひろしさんは、
二つとないオカリナ一本一本と、購入する演奏者との出会いを大切にしています。)

音がほっこりしている

オカリナは、どんなに調律されたモデルでも、音程が微妙にずれているのですが、
このずれこそが、「ほっこり感」を出す秘密です。
オカリナの音は、ほっこりと感じることができる。
その理由は、音程が微妙にずれているからなんです。
  

その時々でいろいろな表情が出せる

オカリナは気まぐれで、その時々で音程にむらがあるといわれます。
しかし、このことは逆に、
その時々でいろいろな表情が出せるということでもあります。
この音程がまちまちであることを利用して、
その音程にあった装飾運指(小節のような感じで指をぶらせる方法)や、
タンキングをするところと、しないところの変化をつける
音の終わりで息を弱める、逆に音の立ち上がりで息を徐々に強めるなど、
まちまちの表情を出して
曲がまるで生きているように吹くことができるのも
オカリナの醍醐味です。

音に揺らぎがあり心地よい

また、オカリナは正確に調律された金管楽器と違い、
一定の息であっても、正確な音程を保てないことが多いんですが
これこそが、オカリナの「揺らぎ感」の秘密です。

例えば、ろうそくの光がどうして心地良いのでしょうか?
電球は一定の光度を保っていますが、
ろうそくは、自然のままに強く光ったり弱く光ったりします。
この自然にまかせた揺らぎが、人の感性に溶け込んでくるのです。
だからろうそくの光は、瞑想にも使われます。

音についても同じことがいえるようです。
オカリナの音は、自然の土からの音なので、
揺らぎがあります。
この揺らぎこそが、人の耳に心地良さをもたらすと思います。

「いいんだよ」と感じられる

かすれて出ない音があるオカリナがあるといいましたが、
こういうオカリナをあえて選んで演奏する事もあります。
この「かすれ感」がたまらないという場合もあります。
人付き合いでも、お互いに短所があって、
それを「いいんだよ」「まあええやん」と受け入れることで、気楽になれますよね。
オカリナもそうなんです。
完璧な音が出ないからこそ、親しめる、身近に聴けるという一面があります。

シンプルでわかりやすい

また、オカリナの音域は狭いんですが、
これは見方を変えれば、シンプルでわかりやすいということです。
初心者の方からしても吹きやすいし、マスターしやすい。
さらに、このシンプルさは、熟練の人にも手放せない要素です。
シンプルだからこそ、
シンプルな音域の中で、魂を込めていく。
吹く息に心を入れていくということができると私は思います。

アドリブがしやすい

オカリナは、リコーダーと違い、2倍音が出ないので、
曲によっては、高いほうのソ以上がどうしても出せず、
楽譜通りに吹こうとすれば物理的に無理ということになります。
この対策として、例えば、2倍音ではなく、
指穴と吹き口がオカリナ2つぶん、または3つぶんある、「複数菅モデル」を購入する、
高さの違うオカリナを何本か用意し素早く持ち替える、
私が持っている「天オカリナ」のように、
指使いと息の量を工夫することで高いほうのソを出せるオカリナを選ぶという方法がありますが、
思ってみてください、
一人で楽しんだり、アットホームな場で吹くときに、
楽譜通りに吹く必要があるでしょうか。

考え方を変えれば、
音域が足らなかったら、アドリブすればいいんです。
高い音を無理に出さずに、低いオクターブに戻る、
または高い音が出ないまま、その付近の音でメロディーを作る、
そうしたら、楽譜通りの曲でなく
自分のオリジナル曲になります。

音域が狭くてシンプルだからこそ、
アドリブがしやすいのもオカリナならではの特徴です。

見た目がユーモラスで親しみやすい

「なんだかサツマイモみたい」というのは
親しみの声とわたしは感じます。
オカリナの形はとてもユーモラスです。
だからオカリナを出したら、みんな面白がります。
また、携帯性に優れているというのも、オカリナの長所です。
私はいつでもどこでもオカリナをさりげなく持ち歩いていて、
何かあったらポケットから取り出して吹くということもしばしばあります。

メンテナンスが簡単

陶器のオカリナは水洗いできないのですが、
それだけ、メンテナンスが簡単ということでもあります。
リコーダーでは、息からの水滴が管内にたまり、それを拭きとらなければなりませんが
オカリナ内部は裸の土であり、土が水分を吸収し、
自浄してくれます。

人間と似ているオカリナの特徴

このようにオカリナの特徴を考えてみると
オカリナは実に人間に似ていると思いませんか?

私たち人間一人一人も、かけがえのない個性があるように
オカリナにも個性があり、世界に二つと同じオカリナは存在しません。

短所と言われている特徴もいっぱいあるオカリナですが、
これを「短所」と見ないで、「個性」と見る、
そして、その個性を、ステキに生かし、「長所」にしていく。
こうしたオカリナとのかかわり方は

人と人との関わり方にも共通する部分があるし、
子育てなどでも、その子の短所を、「よい面」として伸ばしていくことに通じていると感じます。

人と人も、お互いに至らないところがあり、
とぼけたところがあるからこそ安心できるように、
オカリナも、完璧でないからこそ、親しく吹ける、ほっこりできる
そんな風に感じるのです。 


「おとぼけオカリナ」福祉施設で大活躍

このように、オカリナは音がほっこりするし、
微妙にずれている、この「おとぼけ感」が
聴く人と吹く人との距離を縮めてくれるのですが、
この感じが、皆さんにとても喜ばれています。

私の母は重度の認知症で特別養護老人ホームにいますが
母に面会に行ったら必ずオカリナを吹きます。

また、ボランティアでもいろいろな老人ホームに行きますが
そこでもオカリナ演奏をします。

オカリナの「おとぼけ感」がとてもいいようで
「ほっこりするわあ」と皆さん、くつろがれます。

オカリナを吹きに行くときは、私はステージの上で吹いていません。
みんながくつろいで、座ってお茶を飲んでいるところにお邪魔して
私も座ってくつろぎながら
「ほな、ぼちぼち、このサツマイモみたいな笛を吹いてみまひょか」
とさりげなく始めます。

皆さんのよく知っている唱歌や
70年代の演歌などを吹くと、

歌を知っている人が歌いだします。
そうしたら、その歌につられて、二人歌い、三人歌い、
歌詞カードなしの合唱会になります。

また、高齢者の方だけではなく、子どもたちにも大人気です。
子どもの施設や教会の日曜学校でもよく吹きますが、

オカリナの「おとぼけ感」は、ちびっ子たちにも大人気です。
例えば、絵本や紙芝居の読み聞かせや寸劇の中で
オカリナで「ぴぽぴぽ」と、すっとぼけた効果音を出してみたり、
ちょうちょや、きらきら星、どんぐりコロコロなどの簡単な曲を吹いたり、
こういうシーンでも、オカリナならではの親近感が生きてきます。

赤ちゃんの姪っ子が泣いていた時に、
オカリナで「ぴっぴっぽっぽ」と吹いてをあやすと、
姪っ子の目がキラキラして泣きやんだこともありました。

(小さい子供さんも大好きな手遊びうたも、オカリナにぴったりです)

オカリナは「うまくない演奏」がいい

また、失敗してもそれがかえって面白い というのもオカリナの特徴だと思います。

とても身近な楽器として吹くので
皆さん親しみを感じられ、
吹いている私も、「演奏家の先生」とかじゃなく、
その辺の友達のような雰囲気で吹いているので
失敗してもそれがかえって親近感になります。
いや、失敗したほうがいいのです。

指使いを間違えることがあっても、
それをユーモアにかえてしまうことができるのは、
オカリナの良さです。

ときには
「しもた、まちがえた」と言って
 アドリブを入れて笑ってもらったり、

つまり、何でもありです。

このように、オカリナには
短所がいっぱいあるからこそ、
その分だけ「持ち味」がいっぱいある。

「楽器のくせに、人間くさい」のです。

オカリナはとてもユーモアがあって、親しみやすい楽器だと思います。

初心者の方やオカリナを手にしたばかりの方、
「うまく吹けない」と悩まないでください。
「うまくない」のが
オカリナの素敵さを引き出す大きなポイントです。

これからも、
「うまくない演奏」一緒にしていきましょう。

最後に、おとぼけオカリナの一例をご紹介します。
オカリナで「ゾウさんお鼻が長いのよ」を吹いたら、こうなりました。