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「夢、忘れないで。前例がなければ、作ればいい。それは挑戦できるってこと。」ソプラノ歌手 青野浩美さんがいつも伝えてくださる素晴らしい言葉です。大学院の音楽学部の卒業公演を間際に難病に襲われ、体の自由を失ったばかりか、「無呼吸発作」に襲われ、気管切開をしなければいのちの保障がなくなってしまった青野歌手。「生きてこそだ。生きなかったら、歌も歌えない」と、気管切開に踏み切る決断をします。しかし、これで声をあきらめることは決してしませんでした。今回はこのことについての珠玉のお話をします。

(カニューレをつけながら、美しいうたを届ける青野さん

写真撮影:管理人 施設連絡協議会主催 青野浩美さんスペシャルコンサートより)

本気で情報を収集すれば、何かが得られる

「バカヤロウ! 君は、命と歌声を天秤にかけて悩んでいるんじゃないのか?!」
という、友人の厳しい、しかし友情を込めた言葉の、ガツンと一発に、
青野さんはハッとしました。

気管切開の手術が数日後に迫ってきました。
そんな中、青野さんは、あらゆる情報にアクセスし、

「気管切開手術を受けても声を失わない方法はないか」
というテーマを設定して、調べに調べました。

人間、本気になってテーマを設定したら、
思いがけない答えや情報にぶつかるものです。

そしてとうとう青野さんは見つけたのです。
気管切開手術の後につける「カニューレ」の中に、
声の質は変わるが話すことができる「スピーチカニューレ」があるということを!


(気管切開とカニューレのしくみ
画像引用:ナースプレス https://nursepress.jp/226285 )


(スピーチカニューレの例
写真引用:KOKEN(株) http://www.kokenmpc.co.jp/products/medical_plastics/tracheal_tube/neobreth_sp/product_l.html

さっそく青野さんは、医師に相談しました。

「スピーチカニューレ」を使えないか?と。

しかし、医師の答えは、しぶしぶでした。

スピーチカニューレはあるが、それに適合する人とそうでない人がいるとのこと。

青野さんは言いました。

手術を受けなければならないのなら、
声を失わない「スピーチカニューレ」にしてほしいと。

こうして青野さんは

「スピーチカニューレ」の適性の検査を受け、
適合条件を満たしていたので、
手術を受けることにしました。

手術は成功しました。

ところが、青野さんの声は、
全く出なかったのです。

声を失うことの意味

それでも青野さんはあきらめませんでした。

医師に頼んで、違う種類のスピーチカニューレに変えてもらいました。

しかし、それでも声は出ませんでした。

医師は、悲しい顔をしながらこう言いました。

「残念ですが…あなたはスピーチカニューレに適合していないようだ」

もう、

青野さんは

歌えなくなるんだ。

医師の言葉は、その宣告を意味していました。

青野さんは、もう、歌手としての未来を失ったのでしょうか?

その現実を青野さんはどう受け入れていくのでしょうか?

彼女を前に、医師は頭を抱えながら、重い口調で言いました。

「手術は成功しました。
しかし、残念ですが・・・
あなたはスピーチカニューレに適合していないようだ・・・」

これは、「あなたは、もう歌えない・・・」という宣告を意味しました。

いのちはとりとめた。

そして

いのちよりも大切なものを、失った。

真っ白い壁の、真っ白な時間。

でも

青野さんは

泣きませんでした。

あまりのことに、泣くことを忘れてしまった・・・?

私が合わなかったんじゃない。カニューレが私に合わなかったんだ

「私は、スピーチカニューレに適合しない・・・・? !」

いえいえ、

青野さんの頭の中では、

別のことが浮かんでいたのです。

「私が適合していなかったのじゃないのよ。

カニューレが私に合っていなかったのよ。」

こういう思考が

青野さんの頭の中にめぐり始めたのです。


(カニューレをつけた青野さん
写真引用: 京都新聞 http://www.kyoto-np.co.jp/fukushi/column/zenrei/170321.html )

「私が適合していなかったのじゃないのよ。

カニューレが私に合っていなかったのよ。」

まさにこれは、

逆転の発想法です。

多くの場合、「現実を受け入れるには・・・」
とか、
「この現実を前にして、ダメージをできるだけ減らすには・・・」
と考えます。

自分の前に道がふさがれたことを前提に考えます。

しかし、

青野さんの発想は、そことは別のところ。

「私が適合していないのではない。

カニューレが合っていないのだ」

と思考したのです。

この思考は、

現実をひっくり返すことになりました。

逆転の思考が 救いの方策を引き寄せる

こう思考すると、
その思考を助けるように、
さまざまなものが意図的にも、また偶然にも、集まってきます。

青野さんは
さらに、スピーチカニューレについて調べました。

そしてついに青野さんは
もう少し大きいタイプのスピーチカニューレがあることを知りました。

これは、医師すら気づかなかった情報です。

いや、
本気で、必死で、探せば、
得ることのできる情報です。

そこには専門性の有無とか、経験の多寡ではなく

本気で調べる。
それに尽きます。


(画像作成:管理人)

そのことで、青野さんは自分自身で道を探し当てました。

青野さんは、自分が探し当てた情報を主治医に見せ、

ぜひカニューレを変えてほしい、

可能性がないと言わないでほしい。

やってみないとわからない。

そう頼み込みました。

そしてもう一回、

カニューレの交換がなされました。

その結果、

声が出たのです。

失ったと思っていた声が、

出たのです!

歌声を届けたい

青野さんにとって、

その喜びは言葉では言い尽くせないものでした。

しかし、

青野さんにとって、声とは一体何でしょうか?

自分の意思を人に伝えるための手段?

コミュニケーションが取れればいい?

ちがいます、

ちがいます。

青野さんにとって、

声とは

美しい歌を歌うためのもの。

魂を人の心に届ける

美しいもの

でなくてはならないのです。

声が出た、

何とか、意思伝達ができた、

でも、よく医療・福祉関係者が言うように

「ADL(専門用語で、生活を維持するための基本機能)が向上してよかったですね」

では済ませることができないのです。

そう、

青野さんは

歌声を取り戻さなければならないのです。

青野さんの思考は、

まだまだ現実にはなっていませんでした。

本当に青野さんは、

この人工的な「カニューレ」という器具を通して発する声で

青野さんのイメージする歌声を取り戻すことができるのでしょうか?

無理?

みんなは無理と言います。

では青野さんはどう考えたのでしょうか?

次回の投稿では、青野さんのコンサートの時に
いつもキャッチフレーズになっているある言葉に触れて

素晴らしい言葉のプレゼントをお届けします。