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広い広い大海原に浮かぶ船が、どのようにしてコースを決め、目的地に向かうのでしょうか。周囲になんにもない海を何日間も進んで、外国の行ったこともない港にどのようにしてたどり着くのでしょうか? そこには、人間が生まれる以前から存在していた真理や法則があったのです。これを使えるようにしたのが航法。今日は、航法のお話をします。

アメイジンググレイス「魂の旅路」の演奏動画です。

真夜中の大海原を行く

魂の旅路

この広い海のまんなかで
何も見えない暗い夜でも
わずかな雲の間から
小さな星の光を見つけたら
私はどこに向かっているかわかります
なぜって
星は何でも知っている
神様が運転しているから
きっちりと動いている。

だから
お星様の光を道案内にして
広い海の真ん中でも
私は行きたいところに向かいます
光を信じて進んでいきます
必ず行きたい所に入港します。
( 詩 星咲繁博 こと オカリナぽーる)

何もない大海原を行くための智慧

広い海を航海するとき
船乗りはどのようにして船の方向を決めているのでしょうか?

地上を走る自動車なら
道路があって、その道路に沿って、運転しますが
海の上には道路も案内板も何もありません。

なんにもない大海原で
船を進めていくためには

様々な航法で針路を計算します。

しかし、どのような航法にせよ
基本は3つのことです。

自分の位置を知る
基準となる方角を知る(北半球の場合、「北」を正確に知る)
目的地を定める

人生の旅路でも
この3つのことを見失わないようにしていくこと
それが大切なんだなと気づかされるのですが

この気づきを深めるために、
少し航法について触れてみたいと思います。

ジャイロコンパスの話

船を進めるためには、自分の位置をまず知らなければなりません。
コンパスで灯台などの目標の方位を測ったり
レーダーで、岬などからの距離を測ったり
「六分儀」という計器で星の高度を測ったりして
いまの自分の船の位置(船位)を海図に書き入れるのです。

そのためには
正確に測るための計器を使い
基準となる方角(北半球では「北」の方角)を正確に知る必要があります。

地球ゴマって知ってますか?
丸いフレームの中に、円盤があって
その円盤を回します。
コマの軸は、その円盤に直接くっついているのではなく、
円盤を支えているフレームにくっついています。

この地球ゴマを回したら、
コマはある一定の姿勢を保ちます。
糸の上や、鉛筆の上に軸を置いていろいろ動かしてみても
コマは一定の姿勢になろうとします。
というのは、直立ではなく、鉛直線から23.4度傾いた姿勢に戻ろうとするのです。

23.4度とは
地球の地軸の傾きです。
地球が23.4度傾きながら自転して回っているから、
地球ゴマも、中の円盤が回る限り、地球と同じ姿勢を保つのです。
私は子供のころ、よく地球ゴマで遊びました。
面白い科学のおもちゃでした。

大人になって、
船に乗り込みました。
そこでまた地球ゴマにお世話になるとは予測もしていませんでした。
この地球ゴマを
航海の世界に応用したものが
「ジャイロコンパス」です。


(画像引用:ウィキぺディア)

ジャイロコンパスの中には
電力で高速に回転する運動体があり、
その運動体が一定の姿勢を保つ性質を利用して
北の方向(「真北」)を指し示します。
ジャイロコンパスの示す方向は、磁気コンパスよりも正確です。

なぜ、こういうことが起こるのかというと、
地球が鉛直面から23.4度の傾きをもって、猛スピードで回転しており
私たちもその大きな回転体の上に位置しているので
地球という回転体の上で回転する小さな回転体は
回転している限り、
地球と同じ姿勢を保ち続けるような作用が働くということです。

この作用は、極点を除いて、地球上のどこにいても働きます。
この原理は
回転運動とベクトルの数式から説明されるのですが
ここでは言及するテーマではないので省略します。

・・・・水中でも、この原理は働きます。
だから
潜水艦なんか水中にいたら、
レーダーも使えないし灯台の方位も計れないけれど
このジャイロコンパスを重用するわけです。

磁気コンパスの話

ただ、ジャイロコンパスの弱点は・・・・
ジャイロコンパスは電気で動きます。
しかも、
回転がぶれなく一定になる(「回転整定」といいますが)まで
何時間もかかります。
電力の供給が断たれた時、
船乗りはもう一つの手段で方向を計らなければなりません。
それは
磁気コンパスです。

よく、市販されているN極とS極のある針で方向を計るコンパスです。
船に備え付けている磁気コンパスは、
市販ものと違い、
コンパス盤面が船の動揺があっても水平を保てる工夫や、
コンパス盤の左右に配置された自差修正装置など、
いろいろな工夫が施されており
もっとしっかりした構造になっています。


(画像引用: https://www.tokyokeiki.jp/products/marine/)

ただ、磁気コンパスを使うには注意が必要なのです。
磁気コンパスで示される「北」は本当の「北」ではないのです。

コンパスの針は、北極付近の地球のN極に向きますが
このN極は、わずかに地軸とずれています。
だから正確には、「真北」と区別して「磁北」と言います。

磁北からは、その磁極と地軸のずれを修正しなければなりません。
磁極と地軸のずれを「偏差(ヴァリエーション)」と言いますが、
その偏差は、船のいる海域でも違うし、偏差の量は経年変化します。

だから、海図には、その海域での偏差と、そこでの経年変化が書かれています。
船乗りは、磁気コンパスを使うとき、こうした誤差を修正しなければならないのです。

 

しかし、誤差はそれだけではありません。
地球の地磁気それ自体が、実際の地軸とずれている誤差が「偏差」なら、
自分の船それ自体の持つ誤差というものもあります。

船はたいがい、鉄がいっぱいあります。たとえ木造船でも例外ありません。
だから船は、その船特有の磁気を帯びています。
その磁気がコンパスに与える影響を考えなければなりません。
この誤差を「自差(デヴィエーション)」と言います。

「自差」もまた、船それぞれでまちまちで、
面白いことに、北半球で建造された船と、
南半球で建造された船の自差の傾向が正反対だったり、
その時々によって「自差」が変わるから、
ドックに入ったときなど、定期的に「自差測定」をしなければなりません。

こうして
マグネットコンパスの指し示す方向に
「偏差」と「自差」の修正をして
正確な航路を把握できます。

船乗りは、いっぱい計算しなければならないので
算数が自然に得意になるんですよ(笑)

磁気コンパスは
船乗りにいっぱい計算をさせてくれます。
そういう意味でも、私は好きです。

コンパスの話から得られる生き方の気づき

磁気コンパスも、ジャイロコンパスも、
地球の性質を利用して、正確な方位を知るもためのものですが、

磁気コンパスの特徴は
二つの誤差を把握して修正しなければならないということでしたね。
実に面倒だとお感じになられたでしょう。

地球上の位置によって変わる「偏差」
これは
私たちの日常生活に当てはめて考えるなら
私たちが活動するところの「場」の特性とか、傾向ではないでしょうか。


(写真撮影:管理人  イギリス寄港時にヴィクトリア号の前で)

日常生活においても、そこの場所の種類や、そこに集まる人などに応じて
興味の幅や感性にも変化があるし、
また、時代や世代で経年変化もする。

私たちが

何事をするにしても考えなければならないのは、

その「場」の特性がどういうものなのかを考え、

そこで自分の取るべきポジションやスタンスを決定していく。

こういう配慮が
磁気コンパスにおける「偏差」の把握と修正ではないかなと思ったわけです。

また一方
「自差」は自分特有の性質
「自分を知る」ということであり、

これも、自分の経験や成長によって変わってきます。

「自分を知る」ことによって
その場で自分がどんな行動をしていくのかを考えることができます。

だから、その「場」の特徴を知って、自分がどのような配慮をするのか考え、
そして、
自分の傾向や性質はどのようなものであるかをよく認識したうえで

意図的に事に臨むと、
大海原のような暮らしの中でも、ぶれることなく進める

そういう真理を、
コンパスの原理から気づくことができるのではないかと考えました。

天文航法の話

また、星というのは、とても正確で頼りになる導き手です。
星は、正確に動いており、
その正確な動きがあるから、星の高度から
自分の位置を正確に計算できるのです。

宇宙の真理や法則というのは、本当に驚くべきことだと思いますが
古代の祖先のころから、私たち人間は
宇宙の真理を発見し、それを活用していたんですね。


(写真撮影:管理人  黎明の海で天測をしていたころ)

星の高度を計算できる時間は限られています。
水平線もはっきり見えて、デネブやベガなどの、明るさの顕著な星だけが
はっきり見える時間
それは夜明け前の黎明とか
日没後のトワイライトタイムです。
この時間に私たちは高甲板に出て、
「六分儀」という、ミラーを組み込んだ計器を使って
星の高度を測り
3つの星の高度から
天球儀のうえに球面三角形を想定して、「位地の線」を算出したものです。

(画像引用:PIXABAY    六分儀は古来より、現在もこのスタイルで使われています)

 

これが、古来、帆船時代より用いられてきた「天文航法」です。

レーダーやGPSが発達した現代でも
この天文航法は船乗りの基礎として必須であり、
練習航海では、しつこいほど、この天文航法の計算をしました。

アメイジング・グレイスの演奏に込めた 魂の旅路への思い

「航法」について、紹介程度ですが、いろいろ書きましたが、
この話から、
一つのことを気づく助けにしてほしいと思うんです。

私たちは
なんにも標識のない大海原を
何もわからずに進んでいる小舟のようなもので

人生という大海原を進んでいる
魂だと思うのです。

魂は、進化するという目的を持っており、
海図に到達目的地が書かれているように
私たちが気付かない魂の海図にも
進化の目的地がちゃんと記載されており、

どんなにむごいことが人生の中で起ころうとも
もうこれ以上生きられないということがこの人生の中で起ころうとも
自分自身の魂の海図の中に
自分が知らなくても
「到着目的地点(アライバル・ポイント)」が記載されており

私たちは人生の大海原の中で
それに向かって航海していると思うんです。
人生の航海の基本もまた、航法での3つの基本が通じます。

すなわち、

自分の位置を知る
基準となる方角を知る(北半球の場合、「北」を正確に知る)
目的地を定める

人生の旅路でも
この3つのことを見失わないように
していくこと
それが大切なんだな思うんです。

先日演奏した「アメイジング・グレイス」も
人生の航海をする私たちの魂への思いを込めて演奏しました。

だから動画の副題にも
「魂の旅路」とつけた次第です。

アメイジンググレイス「魂の旅路」の演奏動画です。