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「生きるってことは、愛だよ」この言葉をくださった90歳のハナさんは、在宅ターミナルケアでお付き合いする中で、私たちヘルパーをとても厳しく、温かく育ててくださいました。忙しさの中でいつしか一番大切な優しい心を忘れがちな私たちに、ハッと気づかせてくれることもしばしばでした。そして「生きるってことは、愛だよ」この言葉は、到底信じられない苦しみの中からいただいた言葉でした。この記事では、この言葉をもらった時のお話をします。

「生きるってことは、愛だよ」この言葉を紹介したくて、オカリナ演奏とともに作った動画がこちらです。曲はシューベルトのアベ・マリアです。

最愛のお嬢さんとの死別の中で

ハナさんは、たえず激痛に苦しむ境遇の中、
いろいろなお話しをしてくださりました。

そんな中で、ハナさんにとって、
こればかりは堪えがたいという
熾烈な出来事が起こるのです。

体も動かない、
食事はもとより、下の事まで、人の世話を受けないと暮らせない、
言葉も、ろれつが思うように回らない、
しかも激痛が絶えず襲う、
これ以上苦しいことが想像できるでしょうか?

ある日
ハナさんのたった一人の娘さん(病気で入院中)の容体が急変しました。
そして間もなく
娘さんは亡くなられたのです。

ハナさんは、娘さんがご存命中、
体が動かず、また遠距離の移動が無理なので、
娘さんに会いに行くことができませんでした。
言葉を交わすこともできないまま、娘さんを失われたのです。

自分の体のこともつらいが、
愛する者を失う、
しかも最愛の者を失うことほど、つらいことはありません。

ハナさんは
枕元に飾った娘さんの遺影を見ては
「どうして先に行ってしまったの、
どうして返事してくれないの」
とお泣きになられるばかりでした。

ハナさんの姿を見て私は思いました。
こんな辛いことがあってもいいのか?
神は、いるのか?
仏は、いるのか?
神の愛とは何か?
み仏の慈悲とは何か?

私はヘルパーとして
家事やお体のお世話をしながら
寄り添っていることしかできませんでした。

涙を絞って出てきた言葉「生きるってことは、愛だよ」

涙を絞るように流し、
細い声をあげて泣き続けられたある日、
ハナさんは、訪問した私に、手を握っておくれといわれ、
私がそっとハナさんの手を握りますと、
出しにくい声を絞り出すように、
次のように語って下さいました。

「生きるってことは、愛だよ。」

ハナさんは、出しにくい声を出しながら続けられました。

「これから私の言うことを、よく聞いておくれ。

私はこんな体になっても生きている。
今、あんたやヘルパーさんと一緒に、時間を過ごしている。

それがなぜだかわからない。
わからないけど今がある。

いいかい、

生きるってことは 愛だよ。

愛に格好なんか ないんだよ。

少ししか生きられない いのちでも、
何歳になっても生きなきゃあいけない いのちでも、

あなたのいのち、誰も代わりに生きられないんだよ。

たった一人のあなたなんだ。

それほど大切なあなたなんだよ。

だから
このいのち
生きて
生きて
生き抜こうね。

それが
愛だよ。

私のいのちがもし、
仏さまのところに行ったとしても、

あんたがこの地球上にいるいのちで

この言葉を一人でも多くのひとに伝えておくれ。」

そして
ハナさんは数日後も、こう言われました。

「生きるってことは、愛だよ。

愛に格好なんてないんだよ。

愛に理由なんてないんだよ。

格好が悪いからって、
しょげるもんか。

私もいのちがけで生きている。

あんたたちも、
一日一日を大切にして
生きるんだよ。」